田島伸二のブログ-Tajima Shinji

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zoom RSS 「ビルマ難民キャンプ」での紙芝居制作ワークショップ報告ー2001年

<<   作成日時 : 2008/01/24 00:14   >>

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2001年9月、タイにあるビルマのメコンカ難民キャンプの図書館が開館して約五ヶ月。それなりに活動は軌道にのりはじめていたが、私は今後さらに図書館が増えていく初期の段階で、第三者である図書館関係者に、図書館の建物やプロジェクト内容について、客観的な意見を聞くことができたら、と切望していた。

この矢先、かつてACCUで23年間、アジア・太平洋地域の識字教育と図書開発事業に携わり、現在は国際NGOとしてICLC国際識字文化センターで、ヒューマン・リテラシー(人間性を確立するための識字)という新しいコンセプトのもと、国境を越えた識字文化活動を精力的にされている田島伸二氏が訪問してくださることになり、私は願ってもない適任者の訪問に小躍りしたい思いだった。

今回、田島氏には、三つのワークショップをひらいていただくことになっていた。一つは難民キャンプの図書館員に「紙芝居制作」を。もう一つはカレン女性グループ(KWO)のメンバーに、「紙漉きの指導」と、そして「教科書教材の改訂版制作」が予定されていた。すでに図書館員には“紙芝居の演じ方”については学んでもらっていたが、図書館にある紙芝居は、すべて日本の作品をカレン語に翻訳したものがわずか数点ほど。紙芝居は、大勢の子どもたちに一堂に視覚を通じてお話を伝えられる特性をもつことから、カレンの伝統的なお話を子どもたちに伝えることのできる最適な方法でもあった。

今回のワークショップの開催をきっかけに、これから難民キャンプで独自の作品が生まれてゆくきっかけにしたい、と私たちは強い期待をもった。
 田島氏の紙芝居制作ワークショップは、メコンカ第二図書館を会場に、二日間にわたっておこなわれた。当日は、図書館員六名のほかに、難民キャンプの美術の先生二名が、授業を休んで紙芝居の絵つけに協力をしてくれることになったのだが、田島氏は図書館に到着早々、全員の自己紹介が終わるやいなや、あっという間に外へ姿を消した。ワークショップの流れを聞かされていない三宅所長は、何がなんだかわからず、参加者に「もうしばらくお待ちください。」
と伝え、ひたすら待つこと二十分。ようやく図書館に戻ってきた田島氏の両手には、図書館の周辺から集めたという、さまざまな葉っぱが抱きかかえられていた。
“何がはじまるのだろう・・・”
これはこの日の参加者の誰もが思ったにちがいない。田島氏は集めた葉のなかから、大きめの熊笹を図書館員に一枚ずつ配り、「このような山奥では、たとえ紙が手にはいらなくても、私たちは身近にあるこうした葉っぱをつかって絵を描くことができるのですよ。みなさんもこの葉に絵を描いて、ぜひ楽しいお話をつくってみてください。みなさんの体験の中には想像力あふれたおもしろいお話がいっぱいありますからね。」と話し、自らもマジックで一つ目おばけのような絵をシュルシュルと熊笹に描いた。

 図書館員が笹の葉っぱに絵を描いている間、田島氏は館内を視察され、「いや、よく短期間でこれだけのものを作りましたね。すごいです。特に竹の素材を生かした床や壁はすばらしい!」と、全部竹でつくられた図書館を絶賛してくださった。その間、キャンプの子どもたちは外のベランダをよじ登ったり、竹の隙間から図書館員たちが何をしているのかと好奇心をもって覗いていた。大人や青少年を対象にした読書室が、建物の一番奥にあるのを見つけた田島氏は、「こうした読書室を設置するときには、大人の学習心理というものを十分考えたほうがいいですよ。大人になるとどうしても羞恥心が芽生えてきます。本を読みたい、借りたいと思っても、この賑やかな子どもたちの読書室の真ん中を毎日通過しなければ、大人の読書室にいけないのをためらう大人がいるでしょうから。」

 この一言は、後の活動に、とても大きな影響をあたえるアドバイスとなった。私は設計段階で誰もが入りやすいようにと、入り口は大きなひとつ扉にしてほしいという依頼はしたが、青少年以上の大人の心理を考え、別の入り口を作るという発想はまるでなかったのだ。もしも自分が利用者だったら、確かに図書館員が子どもたちに絵本を読んだり、歌や手遊びをしているところを横切って、大人の部屋に入ることを喜んだだろうか。“また後で来よう”と、考えるのではないか。特に文字が十分に読めない大人にとっては、子どもと同じように扱われることを嫌う心理がある。田島氏の核心をつく一言はいつまでも私の心に残り、再び図書館の図面と格闘することになった。

さて、絵を描き終えた図書館員は、一人ずつ自分の葉っぱを手にしながらお話を発表してくれた。ある人は鳥を、またある人はずぶ濡れの人間を描いていた。
「屋根が雨漏りをして、家の中にいるのにずぶ濡れになってしまったんです。そうじも洗濯もまたしなくちゃならないからとっても大変!」という彼女の短いお話に、参加者も大笑いした。田島氏は全員の話にいつも穏やかな表情で耳を傾け、いよいよ紙芝居制作にはいっていった。紙芝居はたった二枚でも原因と結果をおもしろく描くだけで効果的な表現ができること、また絵のコマ割とリズム感などを、実際に模造紙に描きながらわかりやすい説明をされた。

絵を描くことがあまり得意ではない図書館員たちは、紙芝居制作では、三つのグループに分かれて、紙芝居の題材となるカレンの昔話を書きはじめ、それを基に美術の先生が絵をつけてくれるのだが、このときできた三作品のうちの一作『ソタピの山登り』は、その後いくら新しい作品がうまれても、子どもたちのリクエストのなかでは常に1位となる大人気の作品となった。この作品の主役はソタピという少年なのだが、実際には「うんち」が主役といってもいい内容だ。田島氏は「こういう、うんちの出てくるお話というのは、いろいろの国にありますね。そして子どもたちはこういうお話が大好きなんですよ。」と言う。
どうやら“うんち”のでてくる話のあまりの滑稽さやたわいのなさに笑う人間の心理は、国を超えて万国共通のようだ。私もそのストーリーや絵に大笑いをし、またさらにその絵に田島氏が真剣にアドバイスをするコメントの内容にも感心するやらで、この傑作の誕生に立ち会えたことは、今も忘れられない。

物語のあらすじは「ある男が山の中で巨大なうんちを見つけた。男はこんなに大きなうんちは人間のものではない、おそらく大鬼か、大蛇に違いない。と大いに恐がり急いで山から逃げ帰ろうとした。そのとき大きな物音を聞いたので恐る恐る振り返ってみたらそれは大きな象がうんちを落としていた。」という単純なお話である。
田島氏は「主人公の男は、この巨大なうんちが誰のものか恐怖感をもって想像していますよね。大男かな?大蛇かな?って。これは想像のシーンですから、現実とは区別するために、絵の周りに雲状の枠をつけましょう。」と、紙をチョキチョキ切って絵のまわりに想像の白い枠をはりつけた。
「これで山登りをしている現実のシーンとの区別が明確で、見ている人にもよりわかりやすくなったでしょう。また、うんちがいかに大きいのかがはっきりわかるように、この人間の大きさをもっと小さくしましょう。」など、一つ一つを訂正していくうちに、絵が物語の中でより生き生きと語りかけはじめ、明解な表現へと変わっていった。その過程にはスタッフも目をまるくし、美術の先生自身も「完成したら、私もこの紙芝居のコピーを記念にほしい!」と言い出すほどだった。

 私は難民キャンプでワークショップをするときに、もっとも大切だと考えていることは、素材の入手の問題だった。特殊な素材や入手が困難な材料を使ってのワークショップは、いくら内容がよくても、素材が継続して入手できなければその場限りで終わってしまい、その後、継続して制作される可能性は低くなる。田島氏のおこなったワークショップの内容は、まさにこの希望に沿うかたちでおこなわれ、たとえ紙がなくとも、周囲にあるもの目をやって利用すればどこにでも可能性は広がることを示唆するものだった。それはどこか難民キャンプの子どもの遊びにも似ている。子どもたちは、日本のように製品化されたきれいな遊具などがなくとも、身近に落ちている竹の棒や輪ゴムなどを使って簡単な遊びを次々と生み出していく。落ちているビニール袋を長い棒の先端にくくりつけ、それでセミ取りをしていたり、凧揚げをしていたり。身近にあるもので創意工夫をして楽しむ姿が、田島氏のワークショップとどこか重なった。

さらに、田島氏は、図書館員たちに薬草について尋ねた後、彼らが集めた大小さまざまな形の葉っぱを、紙に一枚ずつ丁寧に模写し、現物に似た色で丁寧に色を塗り始めるように指導した。そして年配の図書館員に「これは薬草ですね。あなたはこの葉っぱの効用を知っていますか?」と尋ねた。大きくうなずいた彼女に、葉っぱの横に漫画の吹き出しのようなものを書き足して、そのなかに葉っぱの効用をカレン語で書くように言った。そして図書館員たちはさまざまな薬草についての体験談を紙に書き出した。
「私はね・・・・この薬草を食べると苦いけれど、足や腰が痛むときに食べるとだんだん痛みがやわらいでくるのですよ。」出来上がった薬草の紙を数枚つなげていくと、それだけでも植物図鑑のようになる。こうして彼女たちの日常生活の中での薬草の知識が自然とひきだされ、たちまち作品となっていくことに私はとても驚いた。“難民の人たちによって、難民の人たちのもつ能力を活かした活動”というのは、こういうことをいうのか、と。

 メーサリアンにある、カレン女性グループ(KWO)でおこなわれた「紙漉き」のワークショップでも、身近に生えているバナナの葉や幹を使って紙をつくりだした。「紙がなければ、どこにでもある素材を見つけ出して彼ら自身で作ればいいんです。いつも外から与えられるのを待っているのではなく、自分たちで創りだす創造性が若者たちには必要なんです。」という田島氏は、さまざまな葉を使って研究を重ね、今ではパキスタンを初めアジアのあちらこちらで紙漉きワークショップをおこなっている。勉強熱心でややせっかちなカレンの女性たちは、紙を自分たちでつくり出せるということに興奮し、「それで?それから?」と田島氏をせっつき、時々「落ち着いてください。紙が十分乾いてからね。順番に説明をしてゆきますから。」となだめられながらのワークショップだった。彼女たちは、その後も「ミスタータジマは元気ですか?あの紙漉きワークショップ以後、私たちはクリスマスカードなどをつくっていますよ。」と嬉しそうに話す。

また「教科書教材の改訂版制作」のワークショップは、各難民キャンプから集まった10人の熱心な女性教師によって始まった。難民キャンプではイギリス植民地時代の教授法やテキストを継承しているケースもあり、現在カレンの子どもたちが使っている教科書を全員で吟味したあと、田島氏は、難民キャンプの子どもたちの実情やニーズに合わせながら問題点を堀り起こし、参加者全員でNPメソッドという参加的分析法を使って教科書のドラフトを2日間で作り上げた。マラリヤや下痢など難民キャンプにおける子どもたちの健康、生活、栄養、職業、将来の夢などについて約10章にわたる内容の教科書を各先生に分担して執筆してもらった。わずか2日間で教科書を作りあげるということは普通には信じがたいが、その手法を使えば、わかりやすくおもしろい内容の教科書が、みんなが興味をもちながらも短期間で製作することができたのは全く大きな驚きでもあった。これらの教科書のドラフトは、各キャンプで教師たちが実際に使うフィ−ルドテストを経て初めて形になっていくものとの説明があったが、参加者は新しい教科書制作の手法と大きな手応えを感じて、実に嬉しそうにドラフトを持ち帰って行った。

田島氏が彼女たちに忘れられない印象を残したのは、私はこうしたワークショップの内容だけではないと思っている。それは、ワークショップの初日、田島氏は自己紹介のとき、日本がかつてビルマで、またはカレン人にたいしておこなった過去の過ちにたいして、深くお詫びするところから始めていったからである。

「でも、こうした過去がありながらも、今私たちは一緒にワークショップができることを、本当に嬉しく思います。」と涙ながらに話す田島氏に、参加したカレンの女性たちも共に涙していた。
 今なおアジアでは、日本が残した歴史の深い傷跡があちらこちらに残っている。戦争を知らない私たちの世代も、その傷跡と心の痛みを知り、真摯な贖罪の気持ちで彼らに接することが、新しい未来を一緒に生きるための前提となるのではないだろうか。彼女たちが田島氏に心開いていくのを目の当たりにして、そう実感した。
                        
  
渡辺有理子(元シャンティ国際ボランティア会)
           
            

* この文章はICLCのニューズレターからの転載
市販されている「図書館への道」の中にも収録されています。

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